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【トピックス:お役にたつ関連情報 】

お墓のお墓

2014年10月8日、NHKのクローズアップ現代、「墓が捨てられる ~無縁化の先に何が~」が放送され、話題になりました。(リンク先では動画も見られます)淡路島に1500トンに上る墓石が不法投棄されているというのです。

通常、不要となった墓石は石材店から処分場に運ばれ、細かく砕かれて道路工事用の砂利などとして再利用されるそうですが、それにはトン当たり5,000円から1万円の費用が掛かります。これを嫌って中間業者が、石材店には無断で不法投棄していたといいます。

このような「お墓のお墓」には、不法投棄できはないケースも多いですが、全国各地で多く見られるようになっているそうです。

お墓のお墓(富士市)

お墓のお墓(富士市)

お墓を継ぐ人がいない・跡取りがいない・無縁墓(むえんぼ)になるのが心配

「継承を前提とする墓のシステムは時代に合わなくなり、対応できない事象が起きている」

茨城キリスト教大、森謙二教授(法社会学)

(少人数で使うことが前提の)墓が増えていますが、このままでは東京じゅうお墓だらけになってしまう。そしてその半分は無縁墓になるでしょうね。骨を拝むことは仏を拝むことと違います。仏教では本来、骨にはあまりこだわっていません。墓とは仏を供養することによって死者を守るところなのです。

大徳院(真言宗、東京両国)増田任雄 住職

誰にも起こりえるお墓の無縁化

無縁墓(むえんぼ)、というとどんな印象をもたれるでしょうか。「身寄りのない人」、「子供のないかわいそうな人」、「先祖の墓を顧みない不幸者の子供のいる家庭」にこそ起こる出来事のような気がします。自分の家には起こるはずがない、起こらないはずだ、と思われる方もいるでしょう。しかし、お墓の無縁化は誰にでも起こりえます

散骨についての考え調査結果

クリックで拡大します

ある統計によると(『お墓のゆくえ-継承問題と新しいお墓のあり方-』第一生命研究所:小谷みどり、2010年) 、調査対象600名の半分以上の人が、「近いうちに無縁墓になる」「いつかは無縁墓になる」 と答えているのです。

実際、核家族化や少子化が進む現代の日本では、お墓を受け継ぐ者が少なくなっている事から、無縁墓は年々増加傾向にあります。実際、無縁化した墓が全国で急増していることがNHKが行った調査で下記のように明らかになりました。

引き継ぐ人がいなくなって放置された墓について、墓を管理する寺や自治体は、 撤去する1年以上前に埋葬されている人の名前などを官報に公告することになっています。 私たちは“無縁墓”の実態をつかもうと、去年までの10年間の官報の記載を詳しく調べました。 その結果、去年は福井県、長野県、長崎県を除く全国44の都道府県で、合わせておよそ9000人分の墓が “無縁墓”として公告されていたことが分かりました。 その前の年の平成24年には9000人分、平成23年には1万3000人分と、 10年前の平成16年に公告された墓が、4500人分だったのに比べると、いずれも2倍以上に増えています。

「“無縁墓”急増 その実態に迫る」(2014年9月24日:NHK)

ただ、注意しないといけないのはこの数値も「連絡が取れなくなって強制的に撤去される」数字であるということです。無縁になりそう、ということで自主的に廃墓(お墓を閉める)という方は膨大な数になっているだろうということです。

お墓を継ぐ人がいない原因

人口の流動化

無縁墓が増加している一つの原因は人口の都市部への集中です。1960年代から日本人の都市部への流入は急に増加し、もともと菩提寺のあった土地への帰属心は薄れています。言い換えてみると、生まれ育った場所で死んでいく、というライフスタイルの人がすごく少なくなってきているのです。

田舎にいる両親は、「いずれ長男がこの墓に入るから」と田舎に墓を作ることもありますが、その長男にしてみると、遠く離れた田舎の墓に入る事は、非常に非現実的なものです。

それだけでなく、子供にとっては遠い土地にある菩提寺への墓参りは、忙しい現代の生活の中では時間も掛かり過ぎ、その費用も高額に思えるのですし、何より特に親が亡くなって、「実家」のなくなった土地には行く理由もなくなってしまうのです。

少子化・人口増加から減少へ

そして無縁墓増加の大きな理由の一つが少子化、そしてそれによる人口動態の変化です。合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数)が約1.3人の現代では、お墓の承継は非常に難しいものになってきています。少子化による物理的な承継者の減少は深刻で、「お墓を守って行くかどうかは気持ちの問題」と決めつけていくわけにはいきません。

お墓とは何か」、の中で見たように、伝統的なお墓は「長男が継ぎ、次男以降は分家として新たに墓を作る」ということでした?アレッ!と思う方もいらしゃると思いますが、これは一種のねずみ算構造で、人口が無限に拡大していくことで維持されていきます。実際、総務省の資料でも、現在主流の家墓が一般的になってきた明治以降(1868年以降)、日本の人口は急速に増加して来ました。ところが、この資料で見るように日本の人口は2006年をピークに急速に減少していく過渡期にあります。人口増加を前提とした家墓システムに破たんが来るのは当然ということが出来ます。

中には、「いや、我が家には男の子が2人いるから大丈夫」、とおっしゃる方もいるでしょう。しかし、統計的には、その長男は1/2の確率で、一人娘か二人姉妹の長女と結婚することになるのですから、面倒見なければいけないお墓は2つになってしまうはずです。少子化がお墓の承継にどのような結果をもたらすのか、具体的に検証をしてみましたので、詳しく知りたい方は「お墓の承継性の検証」をご覧ください。

長期人口の推移

既存の「家墓」システムは人口の増加に支えられてきた:人口の長期的推移(総務省)。クリックで拡大します

高齢化

第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさんは高齢化もお墓の無縁化の要因の一つであると分析しています。

例えば一昨年(2012年)の例でいいますと、一昨年に亡くなった女性のうち、80歳以上で亡くなった方って7割を超えてるんですよね。
そうすると、例えば90で亡くなった方の二十三回忌を誰がするかということを考えてみれば分かりやすいと思いますけれども、もう子どもも亡くなっている可能性が高いわけですよね。
そうすると、90で亡くなった方の二十三回忌をするのは孫ですよね。 ところが3世帯同居が非常に少なくなってきていて、会うのは年に1回という孫とおじいさん、おばあさんの関係になっていると、おじいさん、おばあさんが亡くなって二十何年後に、きちっと法事をしたり、お墓参りをするっていうのは、なかなか考えにくいですよね。(中略)

長生きをすれば、自分の死後、自分のことを知っていた人がこの世に生きている年数が非常に短いっていうことですよね。
ですからやっぱりお墓参りというのも、来る人なんかも非常に少なくなるということが一ついえると思いますね。

NHK クローズアップ現代「墓が捨てられる ~無縁化の先に何が~」

家族・先祖の概念の変化

旧来の家墓は、「家」「家族」「先祖」といった概念に支えられて成立して来ました。今、これらの概念が大きく変化しています。家墓を支える基盤が大きく損なわれてきているのです。簡単言うと「◯◯家の墓」と、現代人の気持ちが合わなくなってきている、ということだと思います。

「家」意識の崩壊

民法における「家」制度が無くなり、それと共に、家父長制や家督相続といった考え方も(少なくとも法の上では1947年に)なくなりました。もちろん、一般人の考え方や感じ方が変わっていくのには時間がかかりましたが、時代と共に法にそぐう形での変化が起こってきたと思います。

しかし、墓に関する法律は、民法による「平等な相続」の考え方にそぐわない、と「最も適した人が継ぐ」と暗に旧来の承継方法を前提としていたり、その場所が寺であったり、ということで、比較的、「戦前的」な捉えられ方をしてきており、現代でもいまだ「家」が墓を守っていくうえで重要な役割を果たしてきたわけです。しかし、この家制度が崩壊してきた、と宗教学者の山折哲雄 さんは言います。

これは戦前からずっと、日本人の宗教の一つの中心をなしていたのは、『家の宗教』としての先祖崇拝でした。
これがガタガタと崩れ始めた、その結果とも言えるかもしれません。 従来の伝統的な家制度の中で作られたお墓信仰は崩れざるを得ない、魂の行方を信じることができない。 現代人がそうですよね、私もそうだ。 誰も思わなくなってしまったとすれば、自分の死後の問題をどうするか、葬儀の問題をどうするかという問題に直面しているということです。 ある意味ではジレンマの時期に今さしかかっていると思います。

宗教学者 山折哲雄 (NHK クローズアップ現代 「墓が捨てられる ~無縁化の先に何が~」 2014年10月8日)

家族・親族意識の変化

同時に、家だけでなく、家族、親族に関する意識も変化しています。 日本の核家族化も定着してくると、祖父母と一緒に生活したことのある人も少なくなってきて、家族の定義も変わってきています。両親のおじ・おばどころか、自分のおじ・おばも、少し人の多いところであったらわからない、という若者も増えてきている事でしょう。以前葬儀関係の方から「『身寄りのない人が亡くなった』というのでよくよく聞いてみると叔父さんなんだって。叔父さんはもう『身寄りのない人』になっちゃうんだね。」というような話を聞いたこともあります。現実の数字として世帯当たりの人数が減っているだけでなく、心理的にも「家族、親族」の幅は小さくなってきているのです。

先祖意識の変化

同じように先祖、という概念も変わってきているようです。ある統計によると(『お墓のゆくえ-継承問題と新しいお墓のあり方-』第一生命研究所:小谷みどり、2010年) 、先祖の定義として「自分の親や祖父母などの近親者」を挙げた人は「自分の家系の初代または初代以降すべて」を挙げた人より圧倒的に多くなっています。また、女性の6割は「配偶者の親や祖父母などの近親者」は自分の先祖ではない、と考えています。女性の中に『旦那のお墓に入りたくない。実家のお墓に入りたい』 『旦那と同じお墓に入りたいけど、会ったこともない知らない旦那の先祖と一緒はイヤ』という人が増えている、というのにもうなずけます。
小谷さんの調査では、もう一つ、興味深い結果が出ています。「誰と一緒にお墓に入りたいか」という質問に対して、全体では「先祖代々のお墓」が39.0%と最も多く、家墓志向は以前強いのですが、「今の家族で一緒に入るお墓」(25.0%)と「夫婦だけで入るお墓」(10.6%)を合わせると35.6%と近い数字になり、また、若い世代ほどこの差は小さくなり、35~49歳のグループでは、逆転し、29.9%対39.2%と核家族志向が強くなってきていることが見受けられます。

無縁になったお墓はどうなるか

無縁になったお墓には、誰も墓参りに来る人もいないので、雑草がはこびったりして、荒れ果てていくことが考えられます。また、管理料や護寺会費なども納入が滞り、寺や霊園からの連絡もつかなくなっていきます。

最終的には、墓地の管理者(お寺や自治体)が無縁であると判断し、自治体の許可を得て、お墓は撤去され、ご遺骨などは全て合祀されてしまいます。無縁であるという判断は下記「法整備:無縁墓の認定の簡素化」をご覧ください。

法や行政の無縁墓対応・対策

実際、増え続ける無縁墓はお寺や霊園、そして自治体をを悩ませています。法や行政はどのように対応しているのでしょうか。

元々行政は、「お墓問題は個人や家の問題」として、最低限のガイドラインを設けるにとどめており、実際自治体での墓地の空き状況や、無縁墓の状況などについてはあまり興味を持っていませんでした。しかし、実際に無縁墓が増えると、自治体の収入減少にもなり、その観点からも法整備や自治体のお墓問題へのかかわりが増えてきました。

法整備:無縁墓の認定の簡素化

自治体による公告

無縁墳墓の改葬手続は昭和7年に制定されていましたが、これにおける「無縁」を確認する方法は煩雑で、費用もかかるものでした。

無縁墓の増加を受け、平成 9(1997)年に厚生省が設置した「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」において、この点が検討され、その結果、平成 11(1999)年になって、 墓地、埋葬等に関する法律施行規則が一部改正され、無縁墳墓の改葬手続が簡素化されました。現在では管理規定に違反して長期に管理料を滞納したり、親族に連絡が取れなくなった場合や、下記の2つに申し出がない場合には無縁墓として改装を行う手続きが進められるようになりました。

  • 墓の縁故者など、権利を有する者に一年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載
  • 墓の 見やすい場所に設置された立札に一年間掲示して、公告する(無縁墳墓等改葬公告)

実際、お墓に行くと、よくこの立札を見るようになりました。

以前は、墓地使用者と死亡者の本籍地、住所地の市町村長にへの照会や、2種以上の新聞に3回以上公告を出すことなどが義務でしたので、手続き上、かなり簡素化されたといってよいと思います。

無縁墓撤去の現実

管理費の支払いが滞った墓地は、地方自治体や寺、霊園にとって頭が痛い問題です。あまり話題には上りませんが、地方自治体では着々と無縁墓の処理を進めています。

東京都

約27万世帯の利用者がいて、125万体の遺骨が眠る東京都立霊園(全8カ所計)では、2000年2009年の10年間に、1600基は使用許可を取り消し、再整備するなどしました。これは、5年以上にわたって管理料が滞納されている墓地5000基以上について使用者や縁故者を探し、見つかった1000件を除いたものです。遺骨は、合葬されました。このため、2010年には1億7千万円の予算を計上しています。

大阪市

大阪の市営墓地は管理料の滞納が膨らんでおり、その未納額は2001年で約900万円となりました。これは、その5年前の4割増です。これを受け、大阪市では1993年から無縁墓の撤去を始め、2001年までに4100基を撤去して遺骨は敷地内の「無縁塔」に移されました。

無縁化防止策

都立霊園などのウェブサイトを見ていますと、墓地が無縁化することを極力避けるために気を配っていることがうかがえます。良くある質問では「改葬」について触れるほか、承継者がいなくなった時に都立霊園内で通常の墓地から永代供養に移行する「施設変更制度」というあまりよく知られていない制度についても触れています。

また、お寺でも「無縁になって管理料を払ってもらえなくなり、寺の費用で墓石を撤去したりする事が必要になるのなら」と、以前に比べ墓じまいを容認する傾向が出てきています。

お墓を継ぐ人がいなくなることが心配な方は…。

  • 子供がいる方は「次の世代が考えてくれるだろう」と人任せにせず、事前に子供と相談する。息子がいる家庭も、「継いでくれるはず」と思いこんだり、「継ぐべき」と固定化した考えに固執せずに墓の今後について相談する。特に、息子の妻が女系家族の場合は相談が必要。
  • 従来型のお墓に固執せず、承継を前提としない永代供養本山納骨する。現在のお墓を閉める(墓じまい)て、永代供養などにする事も可能
  • 独立したお墓の形(従来型の墓のかたち)が希望の場合、独立型の永代供養墓も最近は出てきているので検討する
  • 樹木葬・桜葬散骨ダイヤモンド葬は、承継を必要としないので自分たちの事情や気持ちにマッチする選択肢か検討する。